読書記録
兎から人間に生まれ変わった者は、「気持ち悪い!」と思う。人間の世界ではすべてが名づけられている。兎の世界が単に生きることだけに向かっていたのとは大違いなことに。それに加え、名前があるために許された無秩序さで物体は並んでいる。まるで「百科事…
第二次世界大戦中、文化人はどのように生きたか。そこに圧政にも負けず、自らの思想信条を守り、英雄的に戦ったひとびとの姿を見たいという気持ちは自然なものだろう。しかし、『灰色のユーモア』に綴られているのは決してそうした「白い」姿ではない。たし…
ほぼ同時に発売された二冊の本、『ここは、おしまいの地』と『死にたい夜にかぎって』。著者のこだまさんと爪切男さんは、以前からともに活動している仲間でもあるそうです。同時に発売されたこと、ともに活動していること、こうした事情は偶然にすぎません…
小説のしくみを物語論の道具立てによってあきらかにする。「しくみ」とは制度であり、しばしばそれが意図的に踏み越えられることから小説の楽しみはうまれる。けれどもそうした楽しみを理解するために物語論は作られたのだろうか。個人的に小説を楽しむのな…
獄中から、つらつら考えたとき、ブリソーにとってアンシアン・レジームなるものは、彼自身のような自由な精神を圧し潰す陰謀であるかのように見えただろう。シャルトルの酒場経営者の一三番目の息子として生まれた彼は、これより七年前に、パリを首都とする…